top of page
5月12日
今日、省吾さんと慶野山に行った。
近場に夜景スポットがあるから、何度も行ってて私たちの定番デートコース。
でも、今日は違った。
いつも通り夜景をみて、いつも通り山を下っていた。
私は、窓から外の景色を眺めていた。
すると、車は走っていたはずなのに急に周りの景色がゆっくりになったような感じがして
いきなり、窓の外、目の前に赤いコートを着た女性が立っていた。
その女性は頭を左右にブンブン振り回していて、それでいてニヤニヤとした顔でこちらを見つめていた。
車の中にいる私をはっきりと見つめていて、目が合った。
私が驚いて声をあげたときには、車は普通のスピードで走っていて
省吾さんは私の声に驚いていた。
省吾さんに車を止めてもらって、後ろの方を見てももういなかった。
省吾さんに説明しても「見ていない」「勘違いだろう」と言ってとりあってくれなかった。
確かにいたのに。
あれはもしかしたら…。

5月13日
やっぱり、あれは”くびきりさま”だった。
あんなの小さいころ流行った都市伝説だと思っていた。
でも、昨日の夜"くびきりさま"がうちに来た。
夜中、聞いたことのない女性の声で目をさました。
コツコツと窓が叩かれている。「あけて、あけて」という声と共に。
しばらくすると声と音はやんだけど、ここは2階だ。
普通の人間なら届くはずがない。
それともわたしが寝ぼけていただけだろうか?

5月14日
昨日の夜も"くびきりさま"はきた。
やっぱりわたしが寝ぼけていたわけじゃなかった。
今日は、昨日よりもしつこく窓が叩かれていた。
カーテンを開けようかどうか、一瞬悩んだけれど怖くてあけられない。
明日も来たらどうしよう。5月15日
やっぱり、昨日も"くびきりさま"はきた。
窓を叩く音はもうコツコツという音ではなく、割れてしまうんじゃないかと思うほど強くたたかれていた。
声も女性の声ではなく、人の声じゃないようなおぞましい声だった。
今日両親に、私の部屋で何か音がしなかったか聞いてみた。
何も聞こえない、と答えた。
両親に相談すべきか…。頭がおかしくなったと思われないだろうか。
もうすぐ省吾さんとの結婚がひかえているのに。
新しく2人で暮らす家だってこの間決めたばかりなのに。
明日省吾さんに相談してみよう。

5月16日
昨日も"くびきりさま"はきた。
昨日は窓だけじゃなく、部屋の扉もドンドンと叩かれていた。
おかげでほとんど眠れていない。
省吾さんにも相談してみたけれど、

「そんなもの都市伝説に決まっているだろう。
そんなに怖いんだったら明日は家に泊まりにおいで。」

と言われた。省吾さんはこの街出身じゃない。
多分この都市伝説も知らないのだと思う。
今日の夜省吾さんが迎えにきてくれる。

-ここで日記がとぎれている-
bottom of page